オフィスの複合機は、購入よりリースで導入されることが多い機器です。初期費用がかからず、保守もセットで任せられる。この手軽さが選ばれる理由です。
一方で、リース契約に関するトラブルが後を絶たないのも複合機の特徴です。「中途解約できず、使っていない機械の支払いだけが残った」「毎月の請求が想定より高い」「入れ替えたら支払総額が膨らんでいた」。こうした事例の多くは、契約の構造を理解しないまま署名したことに原因があります。
この記事では、複合機・OA機器のリース契約で押さえるべき7つの注意点を、仕組みから順に解説します。
まず理解すべき「2つの契約」
複合機の導入では、通常2種類の契約を同時に結びます。ここを混同していると、後の判断を誤ります。
| 契約 | 相手 | 内容 |
|---|---|---|
| リース契約 | リース会社 | 機械そのものを借りる契約。毎月のリース料を支払う |
| 保守契約 | 販売店またはメーカー | トナー供給・修理・定期点検などのサポート。カウンター料金などを支払う |
営業担当者は同じ販売店の人でも、リース契約の相手はリース会社です。そして毎月の請求は、リース料と保守料の2本立てになります。
「月々◯円で使えます」という説明が、どちらを指しているのか、あるいは合計なのか。ここを最初に確認しないと、実際の負担額を見誤ります。
注意点1:リース料と保守料を分けて把握する
見積もりを受け取ったら、次の形に分解してください。
毎月の実質負担 = リース料
+ 保守料(カウンター料金 × 印刷枚数、または月額固定)
+ 用紙代など
そして、契約期間全体の総額を出します。
総額 = リース料 × 契約月数 + 保守料 × 契約月数
複合機は契約期間が長くなりがちなので、月額の小さな差が総額では大きな差になります。月額500円の違いでも、契約期間が長ければ数万円規模の差になります。
注意点2:カウンター料金の単価と条件を確認する
保守契約でよく使われるのがカウンター料金です。印刷1枚ごとに料金が発生する方式で、トナー代や修理費がこの中に含まれるのが一般的です。
確認すべきは次の点です。
- モノクロとカラーの1枚あたりの単価
- 最低請求枚数(ミニマムチャージ)の有無:実際の印刷枚数が少なくても、一定枚数分は請求される仕組みがあります
- 単価に含まれる範囲:トナー、ドラム、定期点検、出張修理はどこまで含まれるのか
- 単価の改定条件:契約期間中に単価が変わる可能性があるか
自社の月間印刷枚数を、モノクロ・カラー別に把握してから見積もりを比較するのが基本です。現在使っている機械のカウンターを確認すれば、実績枚数がわかります。
カラー印刷が多い事業所では、カラーの単価が総額を大きく左右します。逆に印刷枚数が少ない事業所では、最低請求枚数の設定が負担になることがあります。
注意点3:契約期間の長さと機器の寿命を照らす
複合機のリース期間は、機器の法定耐用年数を踏まえて設定されるのが一般的です。期間が長いほど月額は下がりますが、次のリスクが伴います。
- 中途解約ができない期間が長くなる
- 事業規模や印刷需要の変化に対応しづらくなる
- 機器の故障頻度が上がる時期まで契約が続く
一方、期間が短いと月額は上がります。「月額を下げるために期間を延ばす」判断は、その分だけ拘束期間が延びることとセットである点を意識してください。
事業の見通しが不確定なら、月額が多少上がっても短めの期間を選ぶほうが安全な場合があります。
注意点4:中途解約は原則できない
これが最も重要な注意点です。
リース契約は、契約期間全体を前提に料金が設計されています。途中で解約する場合、残りのリース料相当額をベースにした規定損害金の支払いを求められるのが一般的です。
想定されるのは、こうした場面です。
- 事務所を移転・縮小した
- 従業員が減り、印刷枚数が激減した
- ペーパーレス化を進めて複合機が不要になった
- 事業を廃止した
いずれの理由でも、契約が自動的に終わることはありません。契約前に「途中でやめる場合はいくらかかるのか」を必ず確認しておきましょう。
注意点5:「入れ替え提案」の総額を必ず確認する
リース期間の途中で、「新しい機種に入れ替えませんか。月額は今と変わりません」という提案を受けることがあります。
このとき確認すべきなのは、現在の契約の残債がどう処理されるのかです。
残っているリース料を精算せずに新しい契約へ組み込む形になっていると、月額は変わらなくても支払総額は増えている可能性があります。次の点を、必ず書面で確認してください。
- 現在の契約の残債はいくらか
- その残債は誰がどう負担するのか
- 新しい契約の月額と期間、そこから計算される総額はいくらか
- 現契約の総残額 + 新契約の総額 は、いくらになるか
「月額が変わらない」は、判断材料としては不十分です。比較するのは常に総額です。
注意点6:満了時の選択肢と費用を先に把握する
リース期間が終わったとき、選べる道は通常3つあります。
返却する 機器を引き上げてもらいます。このとき、撤去や運搬の費用が発生するかどうかを確認しておきましょう。データの消去についても、内蔵ストレージに印刷履歴やスキャンデータが残る機器があるため、消去の対応可否を確認する必要があります。
再リースする 契約を延長して使い続ける方法です。再リース料は当初のリース料より大幅に下がるのが一般的で、機器がまだ十分に使えるなら合理的な選択になります。ただし、保守契約は別途継続する必要があり、部品の供給期間にも限りがあります。
買い取る 機器を購入して自社所有にする方法です。買取価格の決め方は契約によって異なります。買い取った後は保守契約の扱いも変わるため、事前確認が必要です。
これら3つの条件を、契約時点で確認しておくことが重要です。満了間際に確認しようとすると、選択の余地が狭くなります。
注意点7:契約書の名義と条項を自分の目で確認する
営業担当者の説明と、契約書の記載内容が食い違うことがあります。署名する前に、少なくとも次を確認してください。
- 契約の相手はどこか(リース会社名、保守契約の相手先)
- 契約期間と月額、支払回数
- 中途解約時の取り扱い
- 保守契約の期間と、リース契約との連動の有無
- 機器の設置場所の変更(移転時)の手続き
- 連帯保証人の有無
とくに小規模な法人や個人事業主の場合、代表者個人の連帯保証が求められることがあります。この場合、法人が事業を終えても個人に支払い義務が残るため、内容を理解したうえで判断する必要があります。
また、契約は書面が優先します。「口頭でこう言われた」は、後から証明が困難です。重要な条件は書面かメールで残してもらいましょう。
購入とリース、どちらを選ぶべきか
判断の軸を整理します。
リースが向いているケース
- 初期費用を抑えたい
- 数年ごとに機種を更新したい
- 保守を含めて任せたい
- 資産管理の事務を減らしたい
購入が向いているケース
- 同じ機器を長く使う見込みがある
- 資金に余裕があり、総額を抑えたい
- 印刷枚数が非常に少なく、保守契約の負担が重い
なお、印刷枚数が少ない事業所では、業務用複合機ではなく小型のプリンター複合機で足りる場合もあります。「複合機はリースするもの」と決めつけず、必要な機能から逆算して選ぶことをおすすめします。
契約前チェックリスト
契約書に署名する前に、次の項目をすべて確認してください。
- リース料と保守料が分けて示されているか
- カウンター料金の単価(モノクロ/カラー)と最低請求枚数
- 自社の実際の印刷枚数を把握したうえで試算したか
- 契約期間と、そこから計算した総支払額
- 中途解約時の規定損害金の計算方法
- (入れ替えの場合)現契約の残債の処理方法と、新旧合わせた総額
- 満了時の返却・再リース・買取の条件と費用
- 保守契約の相手先と期間、含まれる範囲
- 連帯保証人の要否
- 複数社から相見積もりを取ったか
このうち、実務で最も効果があるのは10番の相見積もりです。機種、リース会社、保守条件のどこに差があるのかが、比較して初めて見えてきます。
よくある質問
Q. リース料は経費として処理できますか? 契約形態や適用される会計基準によって扱いが異なります。中小企業では賃貸借処理が認められる場合がありますが、リースの会計基準は改正が進む領域でもあるため、顧問税理士に確認してください。
Q. 事務所を移転する場合、機器も一緒に動かせますか? 多くの契約で、設置場所の変更にはリース会社への届出や承諾が必要とされています。移転が決まったら早めに連絡しましょう。
Q. 保守契約だけ他社に変更できますか? 機種やメーカーの体制によります。変更できる場合とできない場合があるため、契約前に確認しておくと安心です。
Q. リース会社から突然請求が来ましたが、販売店とは話がついています。 リース契約の相手はリース会社であり、販売店との合意はリース会社を拘束しません。まずはリース会社に直接、契約内容を確認してください。
まとめ
- 複合機の導入はリース契約と保守契約の2本立て。相手も内容も違うため、分けて把握する
- 毎月の負担は「リース料+カウンター料金」。自社の印刷枚数を把握してから比較する
- 契約期間が長いほど月額は下がるが、拘束される期間も長くなる
- 中途解約は原則できない。事業の縮小・移転・廃止でも支払いは残る
- 入れ替え提案は「月額」ではなく新旧合わせた総額で判断する
- 満了時の返却・再リース・買取の条件は、契約時に確認しておく
複合機のリースは、条件を理解して選べば、初期費用と管理の手間を抑えられる合理的な仕組みです。失敗の多くは、仕組みそのものではなく、確認不足から生まれます。署名の前に、この記事のチェックリストを一度なぞってみてください。
※本記事は一般的な仕組みの解説です。契約条件・料金体系・会計や税務の取り扱いは事業者や状況によって異なるため、契約前に各事業者および税理士等の専門家にご確認ください。


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